昔のデザインで「減った」思考
昔のWebデザインで特徴的だった、しかし現代では優先度が下がったり、ほぼ行われなくなった思考やデザイン手法は、主に「表現のリッチさ」と「制作者側の都合」を優先するものでした。
1. 「装飾・視覚的なリッチさ」への過度な執着
- 立体感や質感(スキューモーフィズム)の再現:
- ボタンやアイコンに影、光沢、グラデーションをつけ、リアルな質感(紙や金属など)を再現しようとする思考が減りました。
- 現代はフラットデザインやミニマルデザインが主流で、情報伝達や機能性を重視するため、装飾的な立体表現はほとんど使われなくなりました。(一部、ニューモーフィズムなど回帰の動きもありますが主流ではありません。)
- 動き(Flash)による「すごい」演出の追求:
- Flash全盛期には、サイトを訪れた人を驚かせ、視覚的な魅力で引きつけることに重きが置かれていました。
- これは「作ることが価値」という制作者側の自己表現や技術力の誇示でもありましたが、読み込みの遅さやスマホ対応の難しさから、この思考はほぼなくなりました。
2. 「固定された環境」を前提とした制作思考
- PCブラウザの固定幅でのレイアウト:
- 特定のPCモニターサイズに合わせて横幅を固定する思考が減りました。
- 現代はスマートフォンやタブレットなど多様なデバイスでの閲覧が前提となり、レスポンシブデザイン(画面幅に応じて柔軟に変化させる)が当たり前です。
- 通信速度が遅いことへの配慮の不足:
- Flashや重い画像を多用し、読み込み時間を犠牲にしてでも演出を優先する思考は減りました。
- 現在は高速回線が普及したとはいえ、モバイル環境での表示速度はユーザビリティとSEOに直結するため、データの軽量化は必須の思考です。
現代のデザインで「増えた」思考
現代のWebデザインで最も重視され、中心にある思考は、**「ユーザーの快適さ」と「目的達成のための機能性」**です。
1. 「ユーザー中心」の設計思考(UX/UIの進化)
- モバイル・ファースト:
- スマートフォンでの閲覧が主流(特に20代では約9割)になったため、「PCサイトをスマホに対応させる」のではなく、**「最初からスマホでの使いやすさを最優先に設計する」**という思考が必須になりました。
- 画面の小さいモバイルで必要な情報・機能を精査し、最適化することが基本です。
- 情報への「たどり着きやすさ」の徹底的な追求:
- 装飾よりも機能性を重視し、**「ユーザーが情報をすぐに見つけ、読みやすいこと」**を最優先する思考が増えました。(1.3)
- そのため、ナビゲーションの位置やボタンの配置、文字の読みやすさなど、**ユーザビリティ(使いやすさ)とアクセシビリティ(誰もが使えること)**の重要性が高まっています。
- 余白(ホワイトスペース)を積極的に使う思考:
- 昔は画面を目一杯使って情報を詰め込む傾向がありましたが、現代は適切な余白を取ることで、情報と情報の区切りを明確にし、視覚的な負担を減らすという思考が定着しました。
2. 「Webサイトの役割」の拡張思考
- デザインとコンテンツの分離、構造化の重視:
- 昔はHTMLの
<table>タグなどでレイアウトそのものを組んでいましたが、現代はHTMLで情報の構造を、CSSでデザインを、JavaScriptで動きを分けて考える思考が定着しています。これにより、データが軽くなり、メンテナンスが楽になりました。(1.6, 2.5)
- 昔はHTMLの
- デザインとマーケティングの融合:
- Webサイトは単なる「見た目」ではなく、**ビジネスの目標達成(集客、売上など)**のためのツールであるという思考が強くなりました。
- キャンペーンのPOPやバナー制作をされているユーザー様には馴染み深いかと思いますが、Webデザインにおいても、SEOやコンバージョン(CV)を意識した設計、つまりマーケティング戦略の一環としてデザインを考える必要性が増しています。(1.7, 2.2)
まとめ
Webデザインの思考は、「制作者の自己表現・技術の誇示」から、「ユーザーの体験の最適化」へとシフトしたと言えます。
